富士ソフトのロボット・コミュニケーション・テクノロジー
今、そして未来

現在、生活をとりまく環境は、さまざまな AI搭載機器で溢れている。エアコンや炊飯器、テレビ、自動車など数えきれないほどだ。
その AIを作り出す知能化技術の進歩は、より便利で暮らしやすい生活の実現へ向け、つねに進化を続けている。
 富士ソフトは、その知能化技術の中のロボットテクノロジー(以下 RT)の共同開発を国内有数の大学や研究所と行い、2008年 10月その一歩を踏み出した。
 家電メーカー向けのRTプラットフォームを作るプランからスタートした RT。そんなある日、開発陣はふと気がついた。
現状は RTといっても、事象が起きたときのフィードバック制御のスピードや精度を追い求めることばかり。起こることを予測して先回りしてさまざまな制御をするようなテクノロジーはないのか。

フィードフォワード制御へ挑む

予測して先回りするもっとも代表的なものは何か。このテーマに一番則したもの、それが人の会話のやりとり、いわゆるコミュニケーション。ロボットと会話をするために必要と思われる、音声認識や顔認識、得意分野であるデータベースなどのプログラム資源は既にある。工学に強い人間もいる。ならば、まずは、人型ロボットを作ってみようと開発をはじめ、試行錯誤を繰り返しながら1号機の完成をみた。
 ロボットはできた。ロジックもしっかりしている。
「歩いて」とコマンドを入れれば、しばしの沈黙の後すり足でゆっくり歩き出す。<聞く体制ができていますランプ>の点灯時に「こんにちは」と話しかけると『コンニチハ』と返す。しかし、これがコミュニケーションなのか?あまりにもかけ離れていた。
 開発チームは、原点に戻り、コミュニケーションとは、人間の構造とは、ということを今までの研究開発の成果を活かしながら、徹底的に追求していくことになる。
 会話のやりとりはキャッチボールに例えられる。周知のとおりキャッチボールは球を相手に投げ、相手が投げ返した球を受け取る、この繰り返し。思い起こしてみると、相手が小学 1年生であれば緩い山なりの球を、ユニフォームを着た 6年生であれば腰を落とし真剣に構えている。
この小さな動作に実は数多くのヒントが隠されているのだ。
それは起き得ることに対して、数多く経験してきたことを無意識で行動に移していることだ。
そう、顔を見て話す、相づちを打つ、相手を凝視しない…など、無意識下で行っている行動、これが違和感のないコミュニケーションの基本なのだ。








方針は決まった
人の予測行動をロボットに当てはめる。すなわちフィードフォワード制御という考え方だ。フィードバックの正確性をいくら追求しても改善にしかならず、コミュニケーションにはならない。次に起こることの可能性を瞬時に計算し準備すること。当然、困難は予想された。気が遠くなるほどのカットアンドトライ。その膨大なデータをしきい値として組込んでいく。正に執念とも呼べる日々が続いた。
 時期を同じくして外観のデザインにも着手する。コンセプトは誰からも愛されるデザイン。コミュニケーションをとる上で容姿は最重要ポイントだ。人間は小さくて丸いものを見ると転がってしまわないように思わず手を添えたくなるという母性的本能がある。開発チームの女性たちが中心となり、威圧感がなく、思わず頭を撫でたくなるようなデザインが見えてきた。
そして PALROと命名される。

ハイブリッド A I構想
 相手の目を見て話をすることは、基本的な会話のマナーだ。もし話し相手が顔や目線を逸らせば不快に思ってしまう。
 ロボットに相手の顔を見続けさせること、これは思った以上に難しい。なぜなら人は絶えず動いているからだ。それも 0.3秒で首ひとつ分横移動するのだ。あっという間にロボットは顔を見失い文字通りキョロキョロしてしまう。そして、認識した顔を捕捉し続けるために 0.2秒 (現在は 0.04秒を実現)でデータを更新することに。しかし、この処理はクラウドでは不可能である。外乱などのリスクが大きすぎるからだ。そこで、人と同じようなコミュニケーションを実現するために、本体に高スペックの CPUを搭載、言葉やデータの複雑な分析、解釈、演算処理は、クラウドに設置した AIで行うことにした。
フロントエンドAIとクラウドAIをハイブリッド構造で運用するシステムを開発したのだ。

2009年 12月、初お披露目
 富士ソフトが主催する第 21回全日本ロボット相撲大会のアトラクションとして、PALROは大勢の観客の前で四股を踏んだ。拍手喝采。
前日まで一度も成功しなかったが、本番は奇跡が起きた。

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産官学、本格始動
 2010年 2月、大学などの研究機関向けに、研究開発用としてのアカデミックシリーズのPALROを販売。開発環境を考え、オープンソースを提供し、さまざまなアプリケーションが開発される。開発チームもさらに日々、エージングやテストをくり返し品質向上を追求していた。そして、大学などの研究機関とともに介護施設への実証実験がはじまった。
一般の人との初めての出会いだ。
 初日、PALROが『おはようございます』と目の前のおばあちゃんに声をかけた。まわりにいたお年寄りたちがどっと湧いた。
あらー、可愛いわねー。その場にいた開発チームのメンバーは、胸が震えたのを覚えている。

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行政も含めた研究機関との数々の実証実験を重ね、BtoB用として 2012年 PALROビジネスシリーズを発売。全国の介護関連施設に多数導入。2013年に神奈川県さがみロボット産業特区にてPALROを活用した実証実験を行うことが決まり、活躍の場をさらに広げる。


「気がきくっていわれたい」
予想して先回りするフィードフォワード制御は、気がきく人のロジックに似ている。
PALROは、会話コミュニケーションでも、一つひとつの動作でも人の役に立つことを目的に開発されている。
少しでも人の役に立って、「このロボット気がきくなあ」といわれるまで、PALROは日々進化を続ける。


10 月  知能化技術開発スタート


12月  第21回全日本ロボット相撲 大会で初お披露目


02月  ヒューマノイドロボット PALRO プレスリリース
02月  PALROアカデミックシリーズ 初出荷
05月  上海万博 出展


04月  高齢者福祉施設マーケットリサーチ開始


06月  コミュニケーションロボット PALROビジネスシリーズ 販売


08月  ●重点プロジェクト「介護施設における認知症患者を含む高齢者向けコミュニケーションパートナーロボット」開始
10月  ●平成25年度 公募型「ロボット実証実験支援事業」「高齢者の体力の維持・向上に活用できる対話ロボット」開始
12月  ●平成25年度 公募型「ロボット実証実験支援事業」「認知症高齢者のリハビリ・介護に活用できるロボットパートナー」開始


07月  さがみロボット産業特区協議会にて「パルロ」を含む生活支援ロボット5種について介護保険の適用を厚生労働省へ申請
10月  ●重点プロジェクト「介護施設における認知症患者を含む高齢者向けコミュニケーションロボット」(コミュニケーションロボットを用いた転倒予防・体力向上運動プログラムの効果検証)開始

11月  ●重点プロジェクト「介護施設における認知症患者を含む高齢者向けコミュニケーションロボット」(有料老人ホームにおけるコミュニケーションロボットの長期導入効果の検証)開始
12月  ●平成 26年度 公募型「ロボット実証実験支援事業」「コミュニケーションロボットを用いた高齢者の健康づくり支援システム」開始
12月  ●平成 26年度 公募型「ロボット実証実験支援事業」「高齢者の介護予防に活用できるコミュニケーションロボット」開始


05月  コミュニケーションロボット Palmi発売
12月  さがみロボット産業特区発の製品として認定
12月  PALROビジネスシリーズ 高齢者福祉施設向けモデルⅡを販売・レンタル開始


01月  ●平成 27年度 公募型「ロボット実証実験支援事業」「ロボットパートナー」開始
04月  人工知能(AI)をテーマにした NHKの番組に PALRO生出演

●印はさがみロボット産業特区の重点プログラム及び活動です